便秘が続いているとき。
ダイエット中で、体重計の数字に一喜一憂しているとき。
以前、こんな相談を受けたことがあります。
「数日出ていなくて、つらくて…。
寝る前に便秘薬を飲んだら、翌朝すっきりして、
体重計に乗ったら少し数字が減っていたんです」
その方は、少し戸惑いながら、こう続けました。
「これって…もしかして、
便秘薬を使うと痩せやすくなる、ということなんでしょうか?」
実は、こうした疑問を抱く人は、決して珍しくありません。
便が出たあとに体が軽くなり、数字も下がれば、
そう感じてしまうのは無理もないことです。
痩せたい。軽くなりたい。少しでも変化がほしい。
その気持ちを、私は否定したくありません。
ただ、ここで一度だけ。
とても誤解されやすいポイントを、静かに整理してみましょう。
便秘薬で痩せる、と思われやすい理由

体重計の数字が一時的に減る仕組み
便秘薬を使ったあと、
「体重が少し減っていた」という声を、私はこれまで何度も聞いてきました。
実際、私自身も若い頃、
便秘が続いたあとに数字が動くと、少し期待してしまった経験があります。
でも、この変化の正体を、できるだけシンプルに言うと、こうです。
体重計は「脂肪」だけを量っているわけではありません。
体の中に入っているものすべて、
水分・食べたもの・出ていない便も含めて、まとめて量っています。
便秘薬を使うと、
- 腸の中に溜まっていた便が外に出る
- 一時的に体の水分量が減ることがある
この2つが重なることで、
体重計の数字だけが先に軽くなることがあります。
たとえるなら、
ランドセルを下ろした直後に体が軽く感じるようなもの。
中に入っていた荷物が減っただけで、
体そのものが変わったわけではない、という状態です。
「出た」と「脂肪が減った」は別の話
ここが、いちばん大切なポイントです。
脂肪が減るとき、体の中では、
- 食べたエネルギーより、使うエネルギーが多い
- その状態が、ある程度の期間続く
という流れが必要になります。
これをとても簡単に言うと、
「使った分だけ、少しずつ貯金(脂肪)を切り崩す」ようなイメージです。
一方で、便秘薬の役割は、
腸の中の“通り道”をサポートすること。
脂肪を燃やしたり、
体に蓄えたエネルギーを減らしたりする働きは、
基本的には想定されていません。
だから、
出た=痩せた
体重が減った=脂肪が減った
この2つは、
似ているようで、まったく別の出来事なのです。
便が出て体が軽く感じるのは、自然な感覚。
でもそれを「ダイエットが進んだサイン」と受け取ってしまうと、
体とのズレが生まれてしまうことがあります。
だからこそ、ここは静かに、
事実だけを知っておくことが大切だと、私は感じています。
便秘薬の働きと、ダイエットとの関係

栄養はどこで吸収されているのか
「便秘薬で痩せるかも?」という疑問を聞いたとき、
私がまず思い浮かべるのが、腸の中で起きている“場所の違い”です。
私たちが食事からとった栄養やカロリーは、
実はお腹の前半部分にある『小腸』で、ほとんど吸収されます。
小腸は、
スポンジのように栄養を吸い取る場所。
ごはんやおやつのエネルギー、
体を動かすための材料は、
ここですでに体の中に取り込まれています。
一方で、便秘薬が主に働くのは、
その先にある『大腸』です。
大腸は、
栄養を吸収する場所というより、残りかすをまとめる場所。
だから、仕組みとして考えると、
便秘薬がカロリーや脂肪の吸収を止める、
という働きは、基本的には想定されていません。
この話をすると、
「場所が違うんですね」と、ほっとした表情をされる方も多いです。
便秘薬が作用する場所
では、便秘薬は腸の中で、どんな役割をしているのでしょうか。
便秘薬の働きは、大きく分けると、
- 腸の動きをサポートする
- 便に水分を含ませて、やわらかくする
といったものです。
たとえるなら、
詰まりかけた水道の流れを、少し手助けするようなイメージ。
流れをよくすることで、
「出にくさ」を和らげるサポートをします。
ただしこれは、
出しやすくするための働きであって、
・脂肪を燃やす
・体にたまったエネルギーを減らす
・体重を落とす
といった目的で作られているものではありません。
私自身、過去に「痩せたい気持ち」と「便秘のつらさ」が重なって、
考え方が混ざってしまった時期がありました。
でも、腸の仕組みを知ってからは、
便秘薬とダイエットは、役割がまったく違うと、落ち着いて考えられるようになりました。
それぞれの目的を、きちんと分けて考える。
それが、体を大切にする近道だと、私は感じています。
ダイエット目的での使用に注意が必要な理由

水分・ミネラルバランスへの影響
便秘薬について相談を受けていると、
「最近、なんとなくフラッとする気がする」
「疲れやすくなった気がする」
そんな声を聞くことがあります。
もちろん、すべてが便秘薬の影響とは限りません。
ただ、仕組みとして知っておいてほしいことがあります。
便秘薬の中には、
便を出しやすくするために、腸の中の水分を動かすタイプがあります。
その結果、便と一緒に、
体の中の水分や、ミネラル(体の調子を整える小さな栄養素)が、
少し多めに外へ出てしまうことがあります。
ミネラルは、たとえるなら、
体の中で電気や歯車をスムーズに動かすための部品のような存在。
ダイエット中で食事量が少ないと、
もともと補給が足りていないところに、
必要なものまで減りやすくなる場合があります。
私自身も、食事を減らしすぎていた時期に、
「痩せたいのに、なんだか元気が出ない」
そんなちぐはぐな感覚を覚えたことがありました。
体重よりも先に、
体のコンディションが崩れてしまうことがある。
それは、知っておいてほしい事実です。
腸の働きが鈍くなる可能性
もうひとつ、よく質問されるのが、
「便秘薬って、ずっと使っても大丈夫なんですか?」という点です。
腸は本来、
自分で動いて、便を押し出す力を持っています。
ところが、外からのサポートが続くと、
腸が「助けてもらうのが当たり前」だと覚えてしまうことがあります。
これは、
ずっとエスカレーターに乗っていると、
階段を上るのがつらく感じるのと、少し似ています。
その結果として、
- 前より出にくくなった気がする
- 使わないと不安になる
そんな感覚につながる人もいます。
もちろん、
すべての人に起こるわけではありません。
便秘薬が必要な場面も、確かにあります。
ただ、ダイエット目的で、
「体重を減らしたいから」という理由だけで使い続けることは、
腸の本来の力を遠ざけてしまう可能性がある。
私は、そう感じています。
体を軽くしたいなら、
まずは体の働きを弱らせないこと。
それも、大切な視点ではないでしょうか。
痩せたい人ほど知っておきたい、腸との付き合い方

便秘と体重が同時に気になるとき
便秘と体重の悩みは、
不思議なくらい、同時にやってくることがあります。
「出ていないから太っているのかも」
「出れば、少しは変わるはず」
そんなふうに考えてしまうのは、
これまでたくさんの相談を受けてきた中でも、
とても自然な反応だと感じています。
ただ、腸の働きを少し引いた目で見てみると、
そこには、もっと複雑で、でもやさしい理由があります。
腸は、
- 食べる時間がバラバラ
- 眠りが浅い日が続く
- 気づかない緊張やストレス
そうした日々の積み重ねに、とても正直です。
腸は、暮らし全体を映す鏡。
私はそう感じています。
だから、便秘と体重の悩みが重なったとき、
それは「体が壊れているサイン」ではなく、
少し立ち止まってほしい、という合図なのかもしれません。
数字より「リズム」を見る視点
体重計の数字は、とても分かりやすくて、
つい頼りたくなる指標です。
でも、数字は一日の中でも、
水分量や食事内容で簡単に動きます。
だから私は、
相談に来てくれた方に、こんな質問をすることがあります。
「最近、朝はどんな感じですか?」
・自然にトイレに行けているか
・お腹がパンパンに張っていないか
・食後に重たさが残っていないか
こうした日々の感覚は、
体重計には映らないけれど、
腸の状態をとても正直に教えてくれます。
科学的に見ても、
腸は「決まったリズム」で動くことを好む臓器です。
起きる時間、食べる時間、休む時間。
それが少しずつ整ってくると、
腸も「今、動いていい時間だ」と理解しやすくなります。
「減らす」ことを急がなくても大丈夫。
整えるという視点を持つだけで、
体との向き合い方は、やわらかく変わっていきます。
私自身、遠回りをしてきたからこそ、
この考え方に、何度も助けられてきました。
腸と仲直りするように、
少しずつ、暮らしを整えていく。
それは、派手ではないけれど、
長く続く安心感につながる選択だと、私は思っています。
よくある質問|便秘薬とダイエットの疑問

便秘薬を使うと、体脂肪は減りますか?
現時点の医学・栄養学の考え方では、
便秘薬が体脂肪を減らす働きを持つとは考えられていません。
便秘薬は、腸の中の便を出しやすくするためのサポートが目的で、
脂肪を燃やしたり、エネルギーを減らす作用は想定されていないからです。
体重が一時的に減ることがあっても、
それは便や水分量の変化によるものと説明されることが多いです。
ダイエット中に便秘薬を使うのは、よくないのでしょうか?
「使ってはいけない」と一概に言えるものではありません。
便秘がつらく、生活に支障が出ている場合、
一時的に便秘薬が使われることもあります。
ただし、
体重を減らす目的で使い続けることについては、
慎重に考えたほうがよいとされています。
体質や状況によって感じ方は異なるため、
不安がある場合は、医師や薬剤師などの専門家に相談することが大切です。
毎日使わないと出ないのですが、大丈夫でしょうか?
この相談は、とても多いです。
腸は、本来リズムを持って動く臓器なので、
外からのサポートが続くと、
自分で動く感覚がつかみにくくなることがあります。
ただし、
すべての人に同じ影響が出るわけではありません。
「不安だからやめる」ではなく、
「状況を整理して、相談する」という選択もあります。
一人で抱え込まず、
専門家の視点を借りることも、体を大切にする行動のひとつです。
便秘と体重、どちらを優先して考えればいいですか?
どちらか一方を選ばなければいけない、ということはありません。
ただ、私自身の経験や、
これまで多くの声を聞いてきた中で感じるのは、
体のリズムが整ってくると、
体重との向き合い方も、自然とやわらぐ
ということです。
便秘も体重も、
どちらも「結果」であって、
その背景には、生活全体の積み重ねがあります。
急がず、比べず、
今の自分にとって無理のない視点を選んでください。
この記事を読んだあと、何から考えればいいですか?
何かを始めなくても、大丈夫です。
まずは、
- 体重計の数字だけで自分を評価していないか
- 「出ない=ダメ」と決めつけていないか
そんな問いを、
そっと心に置いてみてください。
考え方が変わるだけで、
体との距離が、少し近づくこともあります。
まとめ|体を軽くしたいあなたへ

痩せたいと思うこと。
体を軽くしたいと願うこと。
それは、決して浅い気持ちではありません。
むしろ、毎日を少しでも楽に生きたいという、
とても切実で、まっすぐな願いだと、私は思っています。
実は私自身、20代の頃、
便秘と体重のことで、何度も自分を責めてきました。
食事を減らしても変わらない。
運動しても、体重計は動かない。
それなのに、便秘薬を使った翌朝だけ、数字が少し下がる。
そのたびに、
「これが正解なのかもしれない」
そう思いたくなったことも、正直あります。
でもあるとき、
体は軽くなっているはずなのに、
心とお腹は、どんどん重くなっていることに気づきました。
焦るほど、腸は黙り込み、
頑張るほど、体は遠ざかっていく。
そこで初めて、
体は、追い立てられると閉じてしまうということを、
身をもって知ったのです。
科学的に見ても、
便秘薬は体重を減らすための手段として設計されたものではありません。
出しやすさを助けるための存在です。
一時的に数字が変わることはあっても、
それが「体が整った証拠」とは限らない。
だからどうか、
体重計の小さな上下だけで、
自分の努力や価値を測らないでください。
今日はちゃんと眠れたか。
お腹に余計な力が入っていないか。
昨日より、少し呼吸が楽か。
そうした感覚のほうが、
あなたの体にとっては、ずっと正直な指標です。
「出ない」を恥じなくていい。
「整える」を選ぶあなたは、逃げているのではありません。
それは、
体と戦うのをやめて、
味方になることを選んだ、勇気ある決断です。
もし今、
どうしていいかわからず立ち止まっているなら。
それは、あなたが弱いからではなく、
体の声を、ちゃんと聞こうとしている証拠。
この文章が、
あなたが自分の体を、
もう一度信じてみようと思えるきっかけになれば。
腸と、心と、人生が、
少しずつほどけていくことを、
私は心から願っています。
参考情報・情報ソースについて
本記事は、一般的な医学・栄養学の知見、および公的機関・医療系メディアが公開している情報をもとに構成しています。
-
Medical News Today
Laxatives for weight loss: Why you shouldn’t use them
https://www.medicalnewstoday.com/articles/325892
-
Healthline
Can Laxatives Help You Lose Weight?
https://www.healthline.com/nutrition/laxatives-for-weight-loss
-
WebMD
Taking Laxatives for Weight Loss
https://www.webmd.com/diet/taking-laxatives-to-lose-weight
-
厚生労働省 e-ヘルスネット
便秘についての基礎情報
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/heart/yk-040.html
-
National Institutes of Health(NIH)/PubMed Central
Laxative misuse and eating disorder behaviors
https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC8273146/
なお、本記事内の体験談・感想は筆者および取材・相談事例に基づくものであり、
すべての人に当てはまるものではありません。
※本記事は一般的な腸活・便秘に関する情報提供を目的としており、診断・治療を代替するものではありません。
妊娠中・持病のある方・薬を服用中の方は、必ず医師や薬剤師など専門家にご相談ください。
※本記事は一般的な腸活・便秘改善情報の提供を目的としており、診断・治療を代替するものではありません。妊娠中・持病・薬を服用中の方は、必ず医師や薬剤師など専門家にご相談ください。


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